2025/06/11

職場の健康づくりを進めるための管理職の巻き込み方

健康経営は、企業の成長と従業員の幸福に直結する重要な取り組みです。従業員が心身ともに健全な状態で働けることで、最大限のパフォーマンスが発揮され、結果として企業全体の生産性向上が期待できます。

しかし、実のある健康経営を実現するためには、企業全体の方針だけでなく、職場ごとの実践的な取り組みが必要です。特に、管理職が職場環境を整え、従業員の健康づくりをリードする役割を果たすことが、成功のカギを握っています。

本コラムでは、健康経営の成果を生み出すために不可欠な管理職の巻き込み方について、事例を交えながら解説します。

1.管理職の巻き込みが健康経営成功のカギ

健康経営の推進においては、組織の各階層にどのように浸透させていくかという「階層化」の考え方が非常に重要です。

[全社レベル]

  • 経営層
    企業の本気度を示すために、全従業員にメッセージを発信し、トップダウンでの意識づけを行う。
  • 健康経営推進部署
    全社的な健康づくりが進むように、PDCAサイクルを回し、施策の実行と改善をリードする。

[事業所レベル]

  • 事業所推進担当者
    事業所の特性を踏まえ、全社施策を実行するだけでなく、事業所独自の施策を企画・推進し、現場での取り組みを加速させる。

[職場レベル]

  • 管理職
    自職場のメンバーが健康的に働ける環境を整え、職場全体の健康づくりをリードする。

どのレベルにおいても、健康経営の推進には欠かせない役割があり、どれも重要です。しかし、特に多くの企業で軽視されがちなのが管理職の巻き込みです。

全社レベルで経営層が発信し、健康経営推進部署が旗を振り、事業所レベルで推進担当者が熱意を持って取り組んでいても、職場レベルで管理職が本気で取り組まなければ健康づくりは進みません。

職場レベルでの健康づくりが進むことで、事業所レベルでの成果が上がり、それが最終的に全社的な健康経営へとつながります。

2.管理職を巻き込む上で欠かせない2つの視点

健康経営の推進において、管理職の関与が重要であることは前述の通りです。

しかし、管理職がその重要性に気づき、積極的に関与するためには、適切な仕組みづくりを行うことが不可欠です。また、健康経営の成果に繋げていくためには、健康課題の根本原因となっている職場環境へのアプローチが不可欠です。

本章では、管理職を巻き込むうえで必要な2つの視点について解説します。

[1]職場の健康づくりを推進する仕組みを作る

多くの管理職は業績目標の達成に向けた業務マネジメントには高い意識を持っていますが、健康マネジメントに対する意識はまちまちです。

具体的には、管理職の健康マネジメント意識が次のような状態であると、その職場では従業員の心身の健康課題が放置されたり、悪化することがあります:

  • 部下の健康に対する配慮がない
    健康的に働くための配慮や声掛け、体調確認がないと、従業員は無理をして働き続け、健康を害する可能性があります。
  • 健康施策の情報伝達がない
    会社が実施する健康施策の情報が従業員に届かないと、健康施策への参加が遅れ、結果的に健康づくりが進まないことになります。
  • 施策参加を妨げる風土
    仕事最優先の文化が根強い場合、健康づくりが優先されず、従業員は健康施策に参加する意欲を持ちづらくなります。

このように、管理職の健康に対する関心の差は大きく、単に「健康づくりを進めてください」と指示するだけでは、管理職の意識や行動を大きく変えることはできません。

そのため、職場の健康づくりを推進するプログラムを構築し、「仕組み化」を通じて全ての管理職を巻き込むことが、健康経営の成功に繋がっていきます。 

[2]職場環境改善とセットで進める

職場の健康づくりを推進する上で、職場ごとの健康課題が、その職場の働き方やサポート体制と密接に結びついていることを理解することが非常に重要です。

具体的な例を挙げると:

  • 過度な業務負担
    業務が過度に負担されている職場では、従業員の食事不摂取や睡眠不足により、心身の健康リスクが高まります。
  • デスクワーク中心
    長時間座りっぱなしのデスクワークが続く職場では、肩こりや腰痛、集中力の低下を引き起こします。
  • 仕事の意義の欠如
    仕事の意義を見出せない従業員が多い職場では、暴飲暴食や夜更かしといった発散行動が誘発され、体調不良のリスクが高まります。
  • コミュニケーション不足
    職場でのコミュニケーションが希薄で同僚間の支援が低い場合、健康づくりイベントへの参加意欲が低下し、生活習慣の悪化リスクが高まります。

これらの健康課題に対処するため、管理職には、会社や事業所の健康施策に従業員を誘導するだけでなく、根本的な職場環境の改善にも目を向けることが求められます。

上述の例でいえば、過度な業務負担を軽減するには?デスクワーク一辺倒の働き方から脱却するには?仕事の意義を明確にするには?コミュニケーションを促進するには?どうしたら良いか、という視点を持つことが重要です。

これこそが、職場の健康づくりを進める上で極めて重要なポイントであり、職場の実情を最も理解している管理職だからこそ、取り組むべき課題なのです。

3.管理職の関与を高め職場レベルでの健康づくりを進めている事例

本章では、管理職の巻き込みを強化し、職場での健康づくりを着実に進めている先進事例を紹介します。

メンタルヘルス対策、禁煙推進、女性の健康課題対策など、個別のテーマを扱う管理職向けの研修や取り組みもありますが、ここでは心身ともに健康的に働ける職場の実現に向けて、管理職の関与意識を高めながら取り組みを進めている先進事例をご紹介します。

管理職の積極関与を進めていくには、以下の3つの観点が必要です。当然これら3つの観点を組み合わせて進めていくことが重要です:

①健康経営の目的・意義に対する理解促進

②自職場の健康課題に対する理解促進

③職場の健康づくり計画の立案と実践の促進

①健康経営の目的・意義に対する理解促進

健康経営に取り組む意義や管理職の役割に対する理解を深めることが、健康づくりを進めるための第一歩です。

SCSK株式会社
SCSKでは、全管理職を対象に「管理職向け教育研修」を実施しています。この研修では、部下の健康管理の重要性や、休職・復職時のマネジメント方法について学ぶこととなっています。また、毎年、新任管理職向けに健康経営と関連施策を学ぶ研修を実施し、管理職全員が健康経営の重要性を理解できるよう取り組んでいます。

②自職場の健康課題に対する理解促進

次に、管理職が自職場の健康状態や健康施策参加状況等について理解し、その改善に向けた課題意識を向上させることが重要です。

大日本印刷株式会社
大日本印刷では、事業部やグループ会社ごとに、健康リスクや生活習慣リスク、健保の保健事業への参加率などをグラフ化して順位付けを行っています。この「見える化」により、各組織の現状を管理職がしっかり把握でき、具体的な改善策を講じるきっかけを作っています。

③職場の健康づくり計画の立案と実践の促進

最後に、管理職が職場の健康課題に対して具体的な改善策を講じ、健康づくりをPDCAサイクルで推進していくことが重要です。

株式会社ダイセル
ダイセルでは、「ココロとカラダの健康づくりワークショップ」を開催し、職場リーダーが自職場の健康スコアレポートを基にグループ討議を行い、各職場で実践できる改善計画を作成しています。これにより、各職場での健康づくりが促進され、PDCAサイクルに沿った継続的な改善が行われています。

より多くのホワイト500事例を知りたい方は以下もご活用ください。

4.WILLEEの支援

健康経営を伴走支援するWILLEEでは、以下の取り組みを通じて、管理職の健康経営における関与・理解を高め、職場における健康づくりを促進しています。

サポート①:健康経営に関する教育コンテンツの企画・作成
WILLEEは、健康経営に取り組む意義や施策の全体像、会社の本気度を伝えるeラーニングや動画等のコンテンツ作成を支援しています。

  • 企画から制作まで
    何のために何をどう伝えていくか、コンテンツの目的整理から内容の詳細設計、資料や動画などの制作まで一気通貫で支援します。
  • 毎年の成果を踏まえ進化
    年度ごとの取り組みの振り返りやそれによる成果を伝え、健康経営に取り組む意義をさらに深めます。
  • 管理職の役割認識を向上
    データ分析結果を基に管理職にとってのメリットを強調し、健康経営の役割を説明します。
  • 健康経営度調査Q17SQ3に適合
    「管理職に対して研修等を通じて(健康経営の推進方針を)定期的に伝達している」に適合。

サポート②:職場の健康スコアレポートの企画・作成
WILLEEは、多様な健康データを統合して、職場別の健康に関する状態・状況を可視化するレポート作成を支援しています。このレポートにより、管理職が自職場の課題を明確に認識できるようになります。

  • 健康データを統合して作成
    多様な健康データを基に、職場ごとのKPI(職場環境、生活習慣、健康状態、施策参加状況など)をまとめたレポートを作成します。
  • 管理職が関心を持つKPIを選定
    管理職が特に注目すべき視点を踏まえて、可視化するKPIを取捨選択します。
  • 経年変化や他職場比較で課題を明確化
    自職場の健康状態等について、経年変化や事業所全体、会社全体と比較することで課題を明確化します。
  • 健康経営度調査Q32に適合
    「従業員の生活習慣や健康経営の取り組み状況について、職場単位で集団分析結果を共有している」に適合。

サポート③:職場の健康づくりプログラムの企画・推進
WILLEEは、全職場を対象とした職場の健康づくりプログラムの企画とその推進・検証を支援しています。管理職向けのワークショップや職場の健康チャレンジなど、お客様の特性に合わせてご提案しています。

  • 健康経営のメイン施策となる
    職場レベルで着実に健康づくりの取り組みが進むような健康経営のメイン施策を企画・詳細化します。
  • 継続的な実践を促進
    各職場で健康づくりの取り組みが継続して実践されるような仕組み・仕掛けづくりや効果検証・改善を行います。
  • 職場の健康風土を向上
    職場の取り組み好事例を収集・整理・共有化し、全職場における健康風土を醸成します。
  • 健康経営度調査Q34に適合
    「事業場・職場における健康経営推進施策の企画、推進、実施状況の把握」等に適合。

健康経営の推進に管理職を巻き込み、職場レベルの健康づくりを推進していきたいとお考えの場合は、ぜひ弊社にお問い合わせください。

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