・健康意識の高い一部の人の取り組みにとどまっている
・健康に関心の低い層の意識や行動が変わらない
・施策が行動変容につながらない
といった課題を感じている企業も多いのではないでしょうか。
実は、こうした背景には、人によって健康に対する認識や行動の段階が異なるという特徴があります。
重要なのは、健康に関心のない人を無理に動かすことではなく、それぞれの状態に応じて段階的に変化を促していくことです。
本記事では、行動変容ステージモデルをもとに、健康施策において行動変容が起こりにくい理由を整理するとともに、健康測定が果たす役割や、企業での活用事例、行動につなげるための設計のポイントについて解説します。

1.なぜ人は健康行動を起こさないのか
多くの企業で健康施策が実施されていますが、その効果には差があるのが実情です。
この違いが生まれる背景を理解するうえで重要なのが、「行動変容ステージ」という考え方です。
健康に対する意識や行動は突然変わるのではなく、段階的に変化していくものであり、一般的には以下の5つのステージを経て進んでいくとされています。

無関心期:健康に関心がない
関心期:健康に関心はあるが行動していない
準備期:行動に向けて準備している
実行期:行動を開始している
維持期:行動が習慣化している
そして実際のデータを見ると、
男女ともに約6割が「まだ行動に移せていない層(無関心期・関心期)」であることが分かっています。

出所:健康保険組合連合会「令和5年度 特定健診の『問診回答』に関する調査」(令和7年8月公表)
問診項目21「運動や食生活等の生活習慣を改善してみようと思いますか」より作成
この層は、
改善するつもりはない(無関心期)
改善したいとは思っている(関心期)
といった、いわゆる「行動前の段階」にいる人たちです。
つまり、健康施策において重要なのは、この「まだ行動に移せていない層」を、少しずつ行動に近づいていく状態をつくることです。
行動のカギは「自分ごと化」にある
では、この「行動していない層」はどのように変化していくのでしょうか。
ポイントになるのが「自分ごと化の深さ」です。
行動変容のステージは、「どれだけ自分ごととして捉えているか」によって上がっていきます。
具体的には、以下のような変化が起きています。
- 「無関心期」から「関心期」へ
= 健康を「他人ごと」ではなく「自分ごと」として捉えるようになる - 「関心期」から「準備期」へ
= 健康づくりを「いつか」ではなく「すぐに」開始しようと考える
つまり、自分ごと化が進むほど、人は行動に近づくという構造です。多くの健康施策がうまくいかない理由は、関心期の人に対して「知識提供」や「機会提供」をしているものの、“自分にとって必要なものだ”と腹落ちするレベルまで引き上げられていない点にあります。
その結果、健康イベントがあっても参加しない、健康的な運動・食事環境があっても利用しない、といった状況が生まれます。
健康測定が行動の動機付けになる理由
では、この「自分ごと化」をどう高めるか。その有効な手段の一つが、健康測定です。
健康測定は、体力や身体機能、身体組成、ストレス、生活習慣等の状態を客観的に可視化することで、健康に対する意識の変化を促し、行動への動機づけを高める施策です。
たとえば、測定によって
- 血管年齢が実年齢より高い
- 野菜摂取量が不足している
- 筋肉量が基準より低い
といった結果が可視化されると、「思っていたより良くないかもしれない」「このままだとまずいかもしれない」と、これまで曖昧だった認識が一気に具体化されます。
この瞬間に、「なんとなく気になる状態」から「自分に関係ある」「改善したい」という状態へ自分ごと化が一気に進みます。
さらに重要なのは、この仕組みは関心期だけでなく、無関心層にも作用する点です。
たとえば、普段健康に関心がない人でも、
- “〇〇年齢”というわかりやすい指標
- “社内平均”との比較
- “将来リスク”の可視化
などによって、「自分は関係ない」 → 「自分も対象かもしれない」と認識が変わる可能性があります。
つまり健康測定は、「関心期」の人を「準備期」に進める役割に加え、「無関心期」を「関心期」へと引き上げる役割も持っています。
ただし、ここで注意すべき点があります。
測定によって意識の変化は生まれても、それだけで必ずしも行動につながるとは限りません。同じ健康測定でも、測定だけで終わるのか、測定+αを設計するのかでは、その後の意識や行動に大きな差が生まれます。
また、健康測定と一口にいっても、運動、食事、睡眠など、さまざまな切り口や種類が存在します。自社の課題や対象者に応じて適切な測定を選ぶことも、重要なポイントです。
次章では、こうした観点を踏まえ、健康測定の種類ごとの工夫事例を紹介します。
2.健康測定の工夫事例
本章では、健康測定をうまく活用し、気づきや行動につなげている企業の事例を紹介します。
食事改善につなげる健康測定の工夫事例
東芝ライテック株式会社
全国の営業拠点を中心に「野菜摂取レベル測定会」を実施。自身の野菜摂取状況を把握した後、2か月後に再測定を行う流れを構築しています。
2回目の測定では約4割で改善が見られ、取り組みの継続につながっています。
◎ポイント:測定 → 行動 → 再測定 のサイクルを設計している点
江崎グリコ株式会社
血管年齢測定イベントを実施し、管理栄養士によるアドバイスを提供。さらにイベント期間中は食物繊維が豊富なメニューを食堂で提供するなど、日常の食環境と連動した施策を行っています。
◎ポイント:測定結果を日常の行動(食事)に直接つなげている点
運動習慣を促す健康測定の工夫事例
トヨタ自動車株式会社
体力測定の実施に加え、その結果に基づく運動指導会を複数回実施し、その後に再度測定を行う取り組みを実施しています。
◎ポイント:測定 → 行動 → 再測定の流れを設計し、変化を実感できる仕組みをつくっている
中部電力株式会社
従業員にウェアラブル端末を配布し、歩数や睡眠時間などのデータを可視化。さらにウェアラブル端末を活用した健康増進イベントを年間複数回実施し、継続的な健康行動を支援しています
◎ポイント:日常的なデータ可視化とイベントを組み合わせ、行動の継続を促している点
ストレス改善につなげる健康測定の工夫事例
日清食品ホールディングス株式会社
自律神経機能を測定し、ストレス状態やバランスを可視化。リスクが高いと判断された従業員に対して、セルフケア支援やオンライン面談を実施しています。
◎ポイント:自覚しにくいストレス状態を可視化し、個別フォローにつなげている点
苫小牧市役所
心身のバランスやリラックス度を簡単に測定できる「マインドチェッカー」を設置し、職員が日常的に自分のストレス状態を把握できる環境を整えています。
◎ポイント:日常の中でストレス状態を“継続的に把握できる”仕組みを整えている点
身体の状態に気づかせる健康測定の工夫事例
大塚製薬株式会社
身体機能測定を全国の拠点で実施し、参加者全員に診断書を配布。さらに評価に応じて改善プログラムも提供しています。
◎ポイント:測定結果をもとに「次に何をすべきか」まで示している点
株式会社ロッテ
健康測定イベントにおいて、血管年齢測定や自律神経チェック、ベジチェックなどを実施し、測定結果をもとに専門スタッフが生活改善に向けたアドバイスを提供しています。
◎ポイント:測定結果に基づくアドバイスを通じて、従業員一人ひとりに合わせた改善行動のきっかけを提供している点
3.健康測定の効果を最大化する設計とは
健康測定は、多くの企業で実施されています。しかし実際には、「測定して終わり」「結果を通知して終わり」となってしまい、行動変容につながっていないケースも少なくありません。
健康測定を通じて行動変容につなげるためには、「参加 → 気づき → 行動 → 継続」という一連の流れをつくることが重要です。
そして、その違いを生むのが、「設計」です。

設計① 参加したくなる企画の工夫
その中でもまず重要になるのが、最初のステップとなる「参加」です。どれだけ有効な測定であっても、参加されなければ、その後の意識や行動の変化にはつながりません。
そのためには、以下のような工夫が有効です。
- 短時間で気軽に参加できる
- 楽しさや体験性を持たせる(イベント化)
- 同僚やチームで参加できる仕掛け
「イベント」や「キャンペーン」として打ち出すことで参加する「きっかけ」を与えたり、参加にあたっての時間や場所、心理的な「ハードル」を下げることで、これまで参加してこなかった層の巻き込みが期待できます。
設計② 気づきを与える「見せ方・伝え方」
健康測定において最も重要なのは、結果の「見せ方」や「伝え方」です。単に数値を提示するだけでは、多くの人は面白みを感じないでしょう。行動につなげるためには、以下のような工夫が求められます。
比較で“気づき”を生む
健康測定の結果をそのまま数値として提示するだけでは、多くの人にとっては意味を持ちにくく、「なんとなく見て終わり」になってしまいがちです。重要なのは、測定結果を“比較”の中で見せることです。
具体的には、
- 同年代との比較
- 社内平均との比較
- 健康年齢などの分かりやすい指標
といった形で提示することで、自分がどの位置にいるのかを相対的に理解できる状態をつくることができます。
その結果、「思ったより良くないかもしれない」「このままで大丈夫だろうか」といった“気づき”が生まれます。この気づきこそが、「なんとなく気になる」状態から一歩進み、行動変容につながるきっかけとなります。
今の状態と結びつける
健康測定の結果は、体力や身体機能、ストレスや日々の生活習慣の状態などを可視化するため、現在のコンディションや心身の症状と結びつきやすいものです。
そのため、測定結果と「今の自分の状態」とを結びつけて理解させることで、行動変容を促していくことができます。
具体的には、
- 野菜摂取量のスコアが低い人に対して「お腹の調子が不安定になりやすいと感じることはありませんか?」と伝える
- 姿勢測定の結果が悪い人に対して「身体が疲れやすい、肩こりが気になるといったことはありませんか?」と問いかける
といった形で、測定結果と日常の体感を結びつけることで、「自分に関係ある問題だ」と具体的に認識しやすくなります。
設計③ 行動につなげる導線
測定によって気づきが生まれても、多くの人は、
「何から始めればいいのか分からない」
「続けられる自信がない」
といった理由で、そのまま行動に移れずに終わってしまいます。
そのため、健康測定の設計においては、行動のハードルを下げ、自然と次の行動に進める導線を用意することが不可欠です。
小さく始められる行動を提示する
行動につなげるためには、まず「これならできそう」と思える内容であることが重要です。いきなり大きな目標を提示すると、ハードルの高さから実行に移せないケースが多くなります。
具体的には、
といった、日常生活の中で無理なく実践できる小さな行動を提示することで、最初の一歩を踏み出しやすくします。
個別に合ったアドバイスを提示する
行動を促すうえで重要なのが、「自分に合った方法である」と感じてもらうことです。同じ測定結果でも、人によって課題や生活背景は異なります。
そのため、 一人ひとりの状況に応じた形で行動を提示することが重要です。
具体的には、
といった形で、 「自分向けに設計された行動」を提示することで、実行意欲が高まります。
行動を促す施策と組み合わせる
行動につなげるためには、健康測定単体で完結させないことも有効です。測定後の行動につながる「機会」をどのように提供するかがポイントになります。
具体的には、
といった形で、測定後に実際の行動につなげられる環境を整えることが重要です。
設計④ 継続させる仕組み
健康測定を通じて一時的に行動変容が生まれても、時間の経過とともに関心が薄れ、元の生活スタイルに戻ってしまうことも多々あります。
そのため、健康測定は単発で終わらせるのではなく、継続して取り組める仕組みまで含めて設計することが重要です。
繰り返し測定を通じて変化を実感する機会をつくる
行動を継続するためには、 自分の変化を実感できることが大切です。
具体的には、
といった形で、「変わっていること」を実感できる機会をつくります。
小さな変化でも可視化されることで、「やれば変わる」という実感につながり、行動の継続を後押しします。
習慣化しやすい環境を整える
行動を続けるためには、健康づくりの行動そのものを無理なく続けられる環境を整えることが重要です。
具体的には、
といった形で、仕事や生活の延長で無理なく行動を続けられる環境を整えることが重要です。
ここまで見てきたように、健康測定は実施するだけでは十分ではなく、その後の行動につなげる設計が重要です。
特に、「参加 → 気づき → 行動 → 継続」という流れを途切れさせずにつくることが、健康測定を行動変容につながる施策に変えるポイントとなります。
4.WILLEEのサポート
健康測定を行動変容につなげるためには、その後の設計が重要となります。
しかし実際には、
・どのような測定を選定すればよいか分からない
・行動変容につなげる設計ができていない
・実施後の効果検証まで手が回らない
といった課題を抱える企業も少なくありません。
WILLEEでは、こうした課題に対して、健康測定を起点とした行動変容の仕組みづくりを、企画から実行・検証まで一貫して支援しています。
具体的には、以下のようなプロセスを通じて、企業の状況に合わせたサポートを行っています。
WILLEEの主なサポート
・全体コンセプト設計
・測定内容検討・レンタル業者等調整
・測定+α企画検討
・社内周知チラシ・ポスター制作
・会場レイアウト設計
・運営補助ツール制作
・参加者アンケート設計・分析
・イベント報告書作成
・社内広報用資料作成
・次回施策提案
弊社の健康測定イベント企画・運営サポートについては、以下の記事もご参照ください。ノウハウやマンパワー不足でお困りの際には、ぜひお気軽にご相談ください。
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