健康イベントへの参加率を高めることでも、eラーニングの受講率を上げることでもありません。
本来目指すべき姿は、従業員一人ひとりが自ら健康を維持・増進できる状態をつくることです。
人生には、育児や介護、更年期、働き方の変化など、さまざまな健康課題が訪れます。そのたびに会社が支援することは重要ですが、会社が従業員の健康行動を促し続けなければ成り立たない状態には限界があります。
健康経営において本当に目指すべきなのは、会社が従業員を健康にすることではなく、従業員自身が健康に関する情報を活用し、自ら考え、行動できる状態をつくることです。
その土台となるのが「ヘルスリテラシー」です。
ヘルスリテラシーとは、健康に関する情報を収集し、理解し、判断し、自身の健康維持・増進のために活用する力です。
健康経営を持続的なものにするためには、施策を提供するだけでなく、従業員が自ら健康づくりを進められる力を育んでいくことが重要です。
本記事では、ヘルスリテラシーの基本的な考え方から測定方法、高めるためのアプローチ、そして健康経営への活用方法まで分かりやすく解説します。

1.ヘルスリテラシーとは?健康経営で重要視される理由
ヘルスリテラシーとは健康情報を活用する力
ヘルスリテラシーとは、健康に関する情報を収集し、理解し、判断し、自身の健康維持・増進に活用する力のことです。WHOではヘルスリテラシーを「健康と幸福を促進・維持する上で役立つ情報やサービスにアクセスし、理解し、評価し、活用できる能力」と定義しています。
重要なのは、ヘルスリテラシーは単なる健康に関する知識ではないということです。

例えば、健康診断でコレステロール値が高いという結果を受けた場合、
- コレステロールや健康リスクについて情報を収集する
- 収集した情報を理解する
- 自分に必要な対策を判断する
- 食事改善や運動などの行動に活用する
といった一連の行動を支える力を指します。
つまりヘルスリテラシーとは、「何を知っているか」ではなく、「健康情報をどのように活用できるか」という力なのです。
ヘルスリテラシーが高い従業員は何が違うのか
ヘルスリテラシーが高い従業員は、会社から健康情報が提供されるのを待つだけではありません。
例えば健診結果を受け取った際には、結果を見て終わりにするのではなく、自分の健康状態を理解し、必要に応じて情報を調べたり、改善方法を考えたりします。
また、体調不良やメンタルヘルス不調を感じた際には、必要な情報を収集し、医療機関や保健師などの専門家にも相談しながら、自分に合った対応方法を選択することができます。
さらに、育児や介護、更年期、治療との両立などライフステージの変化に直面した場合でも、自ら情報を収集し、自分に合った健康管理や働き方を考えることができます。
このようにヘルスリテラシーが高い人は、さまざまな健康課題に直面した際にも、自ら情報を収集し、判断し、行動できるようになります。
ヘルスリテラシーの向上は組織にも好影響をもたらす
ヘルスリテラシーの効果は個人だけにとどまりません。
ヘルスリテラシーが高い従業員は、
- 健康情報を周囲に共有する
- 同僚の相談に応じる
- 健康づくりの取り組みに主体的に参加する
- 自らの行動で周囲に良い影響を与える
といった役割を果たすことがあります。
健康づくりは会社からの情報発信だけで広がるものではありません。従業員同士が健康について相談し合い、学び合うことで、健康づくりの輪が広がっていきます。
その結果、
- 健康について相談しやすい職場になる
- 健康づくりが従業員同士で広がる
- 健康施策への参加が促進される
- 健康を大切にする組織風土が醸成される
といった効果も期待できます。
健康経営においてヘルスリテラシーが重要な理由
健康経営において重要なのは、「どれだけ施策を実施したか」ではなく、「従業員の力が高まったか」という視点です。健康情報の発信やイベントの実施はあくまで手段です。
本来目指すべきなのは、従業員一人ひとりが必要な情報を収集し、自ら考え、自分に合った健康行動を継続できる状態をつくることです。
その土台となるのがヘルスリテラシーであり、健康経営を持続的な取り組みにしていくうえで欠かせない要素なのです。
2.ヘルスリテラシーの測定方法 | CCHLで分かること
CCHLとは
ヘルスリテラシーを高めたいと考える企業は多い一方で、その状態を客観的に把握できている企業は多くありません。
セミナー参加率やeラーニング受講率は施策の実施状況を示す指標であり、従業員のヘルスリテラシーそのものを測定しているわけではありません。
そこで活用されている指標の一つが、CCHL(Communicative and Critical Health Literacy)です。
CCHLの5つの設問
CCHLでは、次のような能力を測定します。
- 様々な情報源から必要な健康情報を集められる
- 多くの情報の中から必要な情報を選び出せる
- 理解した情報を他者へ伝えられる
- 情報の信頼性を判断できる
- 情報を活用して行動を決定できる
単なる知識量ではなく、健康情報をどのように扱い、活用しているかを測定することが特徴です。

出所:コミュニケーションおよび批判的健康リテラシーの測定:日本のオフィスワーカーを対象としたパイロット研究
相互作用的ヘルスリテラシーと批判的ヘルスリテラシー
CCHLで測定しているヘルスリテラシーは、大きく二つの側面から捉えることができます。
相互作用的ヘルスリテラシー
健康に関する情報を収集し、理解し、周囲とのコミュニケーションに活用する力です。
例えば、
- 必要な健康情報を探す
- 健診結果や健康情報を理解する
- 家族や同僚と情報交換する
- 専門家へ相談する
- 得た情報を周囲へ 伝える
といった行動に関わる力を指します。
批判的ヘルスリテラシー
入手した情報を鵜呑みにするのではなく、その信頼性や妥当性を評価し、自分に合った形で活用する力です。
例えば、
- 情報源の信頼性を確認する
- 複数の情報を比較する
- 自分に当てはまる情報かを判断する
- 自分なりの目標や計画を立てる
- 情報を踏まえて健康行動を選択する
といった行動に関わります。
CCHLを測るメリット
CCHLを活用することで、
- どの層で情報収集に課題があるか
- 情報の選択や判断に課題があるか
- 情報を行動に活かせているか
- 部門や年代による違いはあるか
を把握できるようになります。
その結果、「どのような健康情報を発信するか」だけでなく、「従業員が健康情報を収集・選択・活用できる状態になっているか」という観点で課題を捉えられるようになります。
3.従業員のヘルスリテラシーを高める方法
ヘルスリテラシー向上は知識の提供だけでは不十分
ヘルスリテラシー向上というと、健康に関する知識を増やすことをイメージする方も少なくありません。
しかし、本質は知識を教えることではなく、健康情報を収集し、理解し、判断し、活用する力を育てることにあります。
そのため企業は、「何を教えるか」だけでなく、「どうしたら従業員が健康情報を活用できるようになるか」という視点を持つことが重要です。

健康情報との付き合い方を学ぶ
健康教育やeラーニングでは、健康に関する知識を伝えるだけでは十分とは言えません。
例えば、
- 信頼できる健康情報はどこで入手できるのか
- インターネットやSNSの情報をどのように見極めるのか
- 自分に必要な情報をどのように探すのか
- 得られた情報をどのように健康づくりへ活かすのか
といった内容もあわせて伝えることが重要です。
健康情報は日々更新されます。だからこそ、一時的な知識を身につけるだけでなく、自ら必要な情報を収集し、活用できる力を育てることが求められます。
自ら考え、選択する機会をつくる
ヘルスリテラシーは、知識を得るだけでは身につきません。
実際に自分で考え、選択し、行動する経験を積むことが重要です。
例えば健康イベントや健康づくり施策では、
- 自分に合った取り組みを選ぶ
- 自分なりの目標を設定する
- 行動計画を立てる
- 実践結果を振り返る
といったプロセスを取り入れることが有効です。
企業があらかじめ正解を示すのではなく、従業員自身が考え、自分に合った方法を選択する経験を積むことで、自律的な健康づくりにつながります。
専門家との対話を活用する
保健師や産業医との面談も、ヘルスリテラシー向上の機会となります。
単にアドバイスを受けるだけでなく、自分の健康状態を理解し、必要な情報を整理しながら、専門家とともに今後の行動を考える経験そのものに価値があります。
こうした対話の積み重ねは、自身の健康課題に向き合い、自ら行動を選択する力の向上につながります。
「教える」から「身につける」へ
企業の健康施策では、健康情報を発信すること自体が目的になってしまうことがあります。
しかし本来重要なのは、従業員が必要なときに自ら情報を集め、判断し、活用できるようになることです。
そのためには、
- 情報を収集する
- 情報を選択する
- 情報を判断する
- 行動する
- 振り返る
という一連の経験を施策の中に組み込むことが重要です。
ヘルスリテラシー向上とは、健康について教えることではなく、健康について自ら学び、判断し、行動できる人を育てることと言えるでしょう。
4.WILLEEのヘルスリテラシー向上支援
CCHLを活用してヘルスリテラシーの課題を可視化する
ヘルスリテラシー向上に取り組むためには、まず従業員の現状を把握することが重要です。
WILLEEでは、CCHLを活用したヘルスリテラシー測定や各種健康データの分析を通じて、従業員の実態を可視化します。
例えば、
- 健康情報の収集に課題がある
- 情報の選択や判断に課題がある
- 情報を健康行動に活かせていない
など、ヘルスリテラシーのどの側面に課題があるのかを把握することが可能です。
課題に応じた施策設計を支援する
ヘルスリテラシー向上のためには、健康教育や健康イベントを実施するだけでは十分ではありません。
重要なのは、従業員の実態に応じて施策の内容を設計することです。
例えば、
- 情報収集に課題がある場合は、信頼できる健康情報の探し方を学ぶ機会を設ける
- 情報判断に課題がある場合は、健康情報の見極め方を健康教育に取り入れる
- 情報活用に課題がある場合は、目標設定や行動計画の作成を取り入れた施策を実施する
など、CCHLの結果を踏まえた施策改善が考えられます。
WILLEEでは、こうしたヘルスリテラシーの視点も取り入れながら、健康教育、eラーニング、健康情報配信、健康イベント、保健指導などの施策設計を支援しています。
効果を確認しながら継続的な改善につなげる
ヘルスリテラシー向上は、一度の施策で実現できるものではありません。
そのため、
測定 → 課題把握 → 施策実施 → 効果検証
というサイクルを継続的に回しながら改善していくことが重要です。
WILLEEでは、CCHLや各種健康データを活用しながら、施策の効果を確認し、次の改善につなげるための支援を行っています。
自律的な健康づくりを支える基盤へ
ヘルスリテラシーは、従業員が自ら健康を守り、ライフステージや環境の変化に対応しながら働き続けるための基盤となる力です。
健康経営を次のステージへ進めるために、「従業員の力が高まったか」という視点で見直してみてはいかがでしょうか。



