「健康施策が定着しない」「一時的な取り組みで終わってしまう」──
こうした悩みを抱える企業も少なくありません。
その背景にあるのが、“健康風土”です。
健康風土とは、制度や施策を支える“組織の文化”であり、
社員の信頼関係や支え合いによって成果を生み出す“土台”でもあります。
本記事では、健康経営を進める上で極めて重要な健康風土について、
そもそも健康風土とは何か、どのように育てていくのか、どうPDCAを回していくのか、について徹底解説します。 ぜひ最後までお読みください。

1.健康風土とは何か ― “健康が当たり前”の職場文化
経済産業省の「健康経営ガイドブック」では、健康経営を成功に導くには、
施策やインセンティブだけでなく、職場の文化や風土といった組織的要因が欠かせないと示されています。
健康風土とは、簡単に言えば「職場全体で健康を大切にする空気」。
制度や施策の有無だけでなく、日常の空気感・信頼関係・価値観の共有が、社員の行動を左右します。
健康風土がある職場の具体的な姿
では、健康風土がある職場とはどのような状態を指すのでしょうか。
以下のような特徴が見られる職場では、健康風土が醸成されているといえます。
- 体調不良のときに、無理せず休める雰囲気がある
- 上司や同僚に健康や働き方について気軽に相談できる
- 感謝やねぎらいの言葉が日常的に交わされる
- 健康に関する話題が自然と社内コミュニケーションの中に出てくる
- 会議中や業務の合間に自然とストレッチや休憩を取る習慣がある
- 管理職が率先して健康行動をとり、職場内で輪が拡がっている
- 成果だけでなく、社員の健康や幸福感も尊重されている
こうした職場では、社員は「会社に大切にされている」と感じ、
健康行動や施策への参加を“自分ごと”として前向きに取り組むようになります。
2.健康風土を醸成するためのアプローチ
では、職場の中で「健康を大切にする空気」は、どのようにしてつくられていくのでしょうか。
その鍵を握るのが、経営層、事務局、事業所推進担当者、管理職、健康リーダー、医療職といった、組織内のキーパーソンたちです。

以下では、それぞれの「主な役割」と「健康風土醸成に寄与する行動例」を整理しています。

これらのキーパーソンがそれぞれの立場から関わり合うことで、社内に以下のような変化が生まれていきます。先進企業の取り組み事例も交えながら解説します。
① 経営層 ──健康経営の想いを伝える推進オーナー
経営層が健康経営に対する取り組み姿勢を明確に示すことで、「自分の会社は健康を大切に考えている」という理解が拡がっていきます。1回きりではなく、ことあるたびに繰り返し伝えていくことで、徐々に社員における理解が進んでいきます。
また、経営層自らが健康施策に率先して参加し、模範となることで社員の健康づくりが促進されます。
その結果、健康に関する取り組みが一過性ではなく、会社全体の文化として根づいていきます。
社長自らが毎月動画で健康づくりに関する情報を発信されています。受動喫煙対策や健康管理など多様な側面から健康の大切さを呼び掛けています。
喫煙による健康被害防止を目的に、当時の社長が禁煙宣言を実施しました。実体験をもとに喫煙者に対して社長自ら禁煙を促し、非喫煙者に対しても喫煙者が禁煙できるようサポート・声かけの協力を仰いでいます。その結果、社内全体で禁煙の風土が醸成され、2015年11月以降より喫煙率0%を継続しています。
② 事務局 ──健康経営を牽引する司令塔
事務局が健康づくりの意識・行動を促進する施策を増やすことで、健康について向き合う機会生まれます。
そして、健康経営の目的や意義を全社に繰り返し伝え、社内の好事例等を踏まえた健康づくりの動機づけを図ることで、施策が“やらされごと”ではなく“自分たちのための取り組み”へと変化していきます。
更には、取り組みの実績や成果を全社に発信することで、興味・関心が芽生える社員が増え、健康経営の輪が拡がっていきます。
全社へ健康経営の情報や実績を恒常的に伝えるため、毎月「充実KUMONライフ新聞」を社内ポータルサイトで発信しています。ワークだけでなくライフにもまつわる経営陣のインタビューや各チームの健康経営に関する取り組み事例、健康経営や働き方にまつわるデータなどを掲載しています。
健康経営の一環として、施策の実績や成果、健康アンケートの結果などを毎月の健康経営通信にて発信。定量的なデータや職場の写真を多用し、取り組みの効果を“見える化”。不参加者にも関心を持ってもらえるような発信を通じて、健康経営の輪を社内に拡げています。
③ 事業所推進担当者 ──現場に根づく健康経営の推進者
事業所推進担当者が現場の声を拾い上げながら、全社方針を各事業所の特性に合わせて展開することで、施策が“現場に合った形”で動き出します。
また、事業所に在籍する社員の課題感やニーズ、事業所の健康資源などを踏まえた取り組みが増えてくることによって、社員の参加意欲や納得感が高まります。
結果として、健康経営が「本社主導のやらされ活動」から「現場が主体的に進める活動」へと変化していきます。
全事業所に健康支援担当者を配置。本社で全社方針や年間計画の策定、企画運営、統計の取りまとめなどを担い、各地区の担当者は本社の健康支援担当と連携し、当該地区の健康管理や健康増進施策の運営を推進しています。
全社の戦略マップを基盤に、事業所ごとにブレイクダウンした戦略マップを作成。全社共通の取り組みを促進しつつ、事業所の特性を活かした健康施策を推進し、現場の実情に沿った柔軟な取り組みを展開しています。
④ 管理職 ──職場の健康を支えるマネジャー
管理職が日々のマネジメントの中で部下の体調や働き方に配慮することで、健康的に働ける環境が形成されます。それにより部下は安心して意見を言えるようになり、体調不良やストレスをため込まずに相談できるようになります。
また、管理職が先導して職場改善を率先して行うことで、働きやすく、やりがいに溢れた職場に変わっていきます。その結果、チームの活気や生産性が向上し、健康施策への参加も自然と増えていきます。
PDCAを回す仕組みとして、健康レポートを発行しています。事業部、グループ会社毎に、健康リスク、生活習慣リスク、健保の保健事業への参加率などをグラフ化し順位付けすることで、それぞれの組織の健康に関する現状を見える化しながら、健康づくりの取り組みを促進しています。
職場における健康づくりについて職場リーダー間でグループ討議を行う「ココロとカラダの健康づくりワークショップ」を開催。職場リーダー自身が、職場の健康課題レポートを基に課題を認識、グループ討議を踏まえて職場改善計画を策定し、それを踏まえて各職場での実践を進めています。
⑤ 健康リーダー ──職場に健康文化を拡げる担い手
健康リーダーが日常の声かけやイベントの参加呼びかけ等を行うことで、職場に明るい雰囲気が生まれます。
同僚同士の交流が増え、「健康の話をするのが当たり前」という空気が形成されていきます。
現場での小さな声かけや活動が、組織全体にポジティブな空気を広げ、健康風土を底から支える原動力になります。
健康活動推進員を各部署に配置。各部の健康窓口として、健康施策への参加呼びかけ、健康出前講座の開催、部署別ウォーキングラリーのチーム取りまとめ、健康ポータルサイトの登録促進活動などを実行しています。ワークショップを通じて健康活動推進員自身が健康知識の習得を図り、所属部署へ健康知識を拡げる活動にも取り組んでいます。
各職場に「健康増進リーダー」を任命。「7つの健康課題=MORITA 7WELL-BEING」を中心とした従業員の健康管理を推進するうえで、健康経営推進部署が企画した健康施策の実行や、各現場の状況把握、結果の回収を健康増進リーダーが担っています。
⑥ 医療職 ──職場・社員の健康に寄り添う伴走者
産業医や保健師などの医療職は、社員一人ひとりの健康に最も近い立場で寄り添い、日常的な健康支援を担っています。
社員の属性や健康課題に合わせて健康セミナーを企画・実施し、社員が自分の健康と向き合うきっかけを生み出します。
また、全社員を対象とした健康面談や相談対応を通じて、不調の早期発見や予防を図り、社員が安心して健康の悩みを話せる環境を整えています。
こうした“顔の見える関わり”によって、社員との信頼関係が育まれ、心身の健康を支える風土づくりへとつながっていきます。
保健師による健康セミナーを新入社員やシニア層など対象別に実施し、生活習慣改善や運動機能チェックを通じて、世代に応じた健康意識の向上を図っています。
また、相談しやすいオープンな医務室づくりや、社内報「医務室だより」での情報発信など、社員の身近な存在として心身の健康を支えています。
全社員を対象に産業医や保健師による15分間の健康面談を毎年実施しています。面談において不調者を早期発見するだけでなく、健康に関する教育を実施。また顔見知りになることで気軽に相談できる関係を構築し、社員に寄り添う伴走パートナーとなることを目指して取り組んでいます。
このように、キーパーソン同士がそれぞれの役割を果たし、つながり合うことで、「健康を大切にする空気」や「支え合いの関係性」が職場に生まれていきます。
これこそが、施策の参加率を高め、社員の行動変容を促し、成果を生み出す“健康経営の土台”=健康風土なのです。
3.健康風土の変化をどう測るか ──「見えない文化」を見える化する3つの観点
健康風土は成果を生み出す健康経営の土台であり、その測定を通じて改善サイクル(PDCA)を回していくことが極めて重要です。
健康経営ガイドブック(改訂版)では、幾つかのKPIの例示がなされていますが、ここでは、弊社が推奨する「健康風土の測定方法を考える3つの観点」をご紹介します。
① 健康に関する「社員自身の状態」を評価する測定方法
健康的な働き方・生活を心掛けている、ワークライフバランスがとれている、健康経営の意義に賛同している、など自身の健康に対するポジティブな状態を示している社員がどれほどいるかを測定する方法です。
② 健康に関する「職場の状態」を評価する測定方法
自身の職場において健康づくりに積極的な社員が多いと感じている、健康に関する話題がよくあると感じている、互いの健康や働き方に対する配慮があると感じている、など職場に対するポジティブな評価をしている社員がどれほどいるかを測定する方法です。
③ 健康に関する「会社への満足感」を評価する測定方法
会社が社員の健康を大切に考えてくれていると感じている、会社が健康経営にしっかり取り組めていると感じている、など会社に対するポジティブな評価をしている社員がどれほどいるかを測定する方法です。

こちらの3つの観点に基づき具体的なKPIを検討し、アンケート等で把握することで健康風土の変化をモニタリングしていくことが可能となります。
4.WILLEEのサポート
ここまで見てきたように、健康経営の成果を創出するためには、制度や施策を企画・推進するだけではなく、それを現場に浸透させて文化として定着させること、すなわち健康風土を醸成することが欠かせません。
しかし、実際の企業では「制度はあるけれど現場に浸透しない」「施策をやっても一過性で終わってしまう」といった課題がよく見られます。
そこでWILLEEでは、健康風土を高めるキープレイヤーの活動を促進するため、以下のような多岐にわたるご支援を提供するとともに、健康風土を測定するKPIを定め、その評価・改善を伴走しています。

各ステークホルダーの関与を高めるWILLEEの支援内容
- 経営層
・社長インタビュー動画の制作
・経営層との対話機会同席 - 事務局
・各種施策のPDCA推進支援
・健康経営eラーニングの制作
・健康インタビュー記事の制作
・健康経営通信の制作 - 事業所推進担当者
・健康経営実務者会議の運営支援
・事業所別KPIレポートの作成 - 管理職
・職場別KPIレポートの作成
・職場改善ワークショップの企画・運営支援
・職場改善好事例集の作成 - 健康リーダー
・健康リーダーの導入・運営支援 - 医療職
・医療職向け研修の実施
・健康管理業務の標準化支援
上記は、いずれも実績のあるご支援内容です。
健康経営の成果創出に向けて、社内の健康風土を高めていきたいと考えられている場合は、ぜひご相談ください。
お客様の特性・状況に応じたサポートをいたします。
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