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「健康づくりの主人公は従業員であって欲しい」ソリューションクリエーターの実現に向けた戦略的な健康経営

健康経営伴走推進パートナー
田澤 直幹

SCREENホールディングスは、半導体製造装置やプリント基板関連装置などを手がける大手精密機器メーカーである。

同社は、従業員の心と身体の健康づくりを推進しており、2023年10月の健康経営度調査で「健康経営銘柄」に選定された。これは、上場企業の中で健康経営に特に優れた企業に与えられる称号である。

WILLEE代表の田澤は、2022年からSCREENホールディングスの戦略立案のサポートを始め、現在に至るまで伴走支援を続けている。

今回、健康マネジメント課の4名にお集まりいただき、SCREENホールディングスにおける健康経営の取り組みや、WILLEEのサービス導入による効果、そして今後の健康経営の推進に向けた意気込みについて伺った。

健康経営の戦略や全体像をどう描けばよいか、思い悩んでいた

御社の健康経営に対する想いを教えていただけますか。

田村:私たちは、事業を通じて社会の持続的な発展に寄与する技術や製品、サービスなどの新たな価値(CSV)を創出する「ソリューションクリエーター」となることを掲げています。そしてその目標を達成するためには、従業員が心身ともに健康であることが不可欠であり、健康経営に取組む意義がそこにあります。

健康経営を進めるにあたっては、最終的には従業員一人ひとりが主体的に健康づくりに取り組むようになって欲しいと考えており、それに向けて従業員個人と職場の両面から健康づくりを推進しています。

田村さんは、202110月に健康衛生部(現 サステナブル推進室 健康マネジメント課)の部長に就任されています。当時の健康経営における御社の取り組みについて教えてください。

田村:当社では以前から従業員の健康管理・増進に向けていくつもの施策を展開してはいたのですが、これらは体系的ではなく、戦略的に実施していたわけでもありませんでした。

そのため、経済産業省が推進している健康経営優良法人認定制度でも、「ホワイト500」に入ったり落ちたりを繰り返していたんです。2021年10月に私がこの部署に着任したタイミングで提出した健康経営度調査でも、準備不足でホワイト500に認定されませんでした。

人的資本経営が叫ばれる以前から、サステナビリティ経営を推進してきた当社としては、ホワイト500をコンスタントに取れるレベルになることは非常に大きな意味を持ちます。経営層からの期待値も大きいものでした。

しかし、健康経営の戦略や全体像をどのように描き、推進していくべきかわからず、知見を有したコンサルタントの力を借りて推進していこうと考えたのです。

なぜ、WILLEEのサービスを導入するに至ったのでしょう

田村:実は当時、すでに別の会社へお願いしようと決めていました。しかし、いくつかの会社と接点を持った中で、田澤さんのプレゼンを聞く機会があり、その内容が非常にわかりやすかったんですね。「健康経営とはこういうものなのか」と理解できたんです。

健康経営を推進する上で最も重要なのは、従業員の理解を得ることです。そのためには、わかりやすく物事を伝える術も持ち合わせた会社が最も適任だと確信し、コンサルをお願いすることになりました。

コンサルサポートが始まって以降、具体的にどのように進めていかれたのですか。

田村:まず健康経営の太い幹について経営層と擦り合わせを行うところから始めました。

以前から従業員の健康づくりに関する社内方針はあったのですが、会社の経営戦略と従業員の健康づくりをしっかりリンクさせて、その方針を「健康宣言」として分かりやすく社内外に示すこと。加えて、会社の目指す姿であるソリューションクリエーターの実現に向けて何に取り組みどのような指標を改善していくかを整理した「健康経営戦略マップ」を策定し、具体的な指標とともに開示すること。それらについて経営会議や取締役会で話し合っていきました。

経営側はもともと従業員の健康づくりを軽視してはいなかったため、きちんと説明すれば社内外に方針を打ち出すことについて理解を得られることはわかっていました。

しかし、私たちの部門にとって経営層を巻き込んだ意思決定は初めての試み。田澤さんのおかげで経営側とロジカルに話を進めることができ、支持を得ることができたのは非常に大きな進歩でしたね。

「いきいき9「グループ一体」データドリブン・・・広がりと深みを増す健康施策

実際、WILLEEの支援を受けながら、具体的にどのような観点で施策を強化していったのですか。

田村:多様な面で強化を図っていったのですが、特徴的なポイントは3つあります。

1つ目は、望ましい9つの健康行動を定めた「いきいき9(ナイン)」というキャッチフレーズを立て、そこに施策を紐づけて発信する仕組みの構築です。例えば「適度な運動を行おう」「良質な睡眠をとろう」といった項目と紐づけて、何のために実施する施策であるのかを明確に示しながら、全社に施策を打ち出すことができるようになりました。

2つ目は、「いきいき9」に紐づけてeラーニングやセミナー、イベントなどの施策を多様化するとともに、施策の対象をグループ会社全体に拡げたことです。元々1つの会社が分社化してできたグループ主要7社を対象とする施策が以前は多かったのですが、今では7社以外のグループ会社も含めて施策に参加できるよう環境を整備しています。これにより、グループ全体で一体感を持った取り組みを行うことができるようになりました。

3つ目は、データドリブンな取り組みの強化です。以前は担当者が少なく致し方ない面もあったのですが、課題分析や効果検証といったデータの活用に大きな課題がありました。データの一部分だけを見て目立った項目をかいつまんで対応施策を行っていましたし、施策を回すことで精いっぱいで、その結果どうだったのか、次はどのようなアクションを取るべきかまで検証・改善が十分できていなかったんです。それが今では、統合データ分析の仕組みを構築し、グループ会社別や事業所別での課題の把握や施策の検討、効果検証も進めやすくなりました。

辻川:データドリブンの取り組みを進める上では、まずは社内のデータを集めることから始めました。

食堂のヘルシーメニュー喫食状況、社内サイト上の健康記事閲覧状況など社内に散在しているデータを整理したり、施策ごとに共通のアンケート項目を定め、また年1回の健康施策アンケートを企画してデータを新規で取得したりと、田澤さんの助言を基にデータを集めていきました。

そしてデータを基にグループ会社間や事業所間で比較したり、経年で分析したりしてみると、色々なことが見えてきました。今まで施策を回すのに必死で見えていなかった社員の反応が読み取れたことで、健康施策の手触り感のようなものを感じられるようになりましたし、「今年度こういう結果だったから来年度はこうしよう」といったCAPDを回す仕組みが1つ1つ出来上がっていきました。

「私たちの声が会社に届いている」従業員からの嬉しい声

施策の強化によって社内にどのような変化がありましたか。

鎌田:従業員からの反応が変わりましたね。

以前は、単に「セミナーがあります」と一方的に通知するだけでした。しかし、今では、例えば問診結果を参考に、「睡眠で十分に休養がとれていない」と回答した従業員に対し「睡眠の質向上、睡眠習慣改善に役立つセミナーを開催します。ぜひ参加してください!」と、保健師からメールを送っています。

それにより、従業員からは「会社が私たちのことをすごく気にかけてくれている」「私たちの声がしっかり届いているんだな」と感じてもらえているようです。

辻川:イベントの企画においても同じです。特に、シニア向けの認知機能・身体機能測定のイベントは大きな反響があり、従業員の反応が明らかに変わりましたね。

宮野:そうですね。実際、シニアの認知機能・身体機能測定会では従業員の方たちと直接交流する中で、「絶対に参加したいと思ってすぐに申し込んだよ」や「開催してくれてありがとう」など、私たちの糧になるような嬉しいコメントをたくさんいただきました。こうしたフィードバックから、「実際に体験できるイベントを望んでいたんだな」ということがよくわかりました。

御社では健康リテラシー向上のためeラーニングも多く提供されています。皆さんの反応はいかがですか。

田村:前向きに受講してくれています。 通知を行うと8割以上の従業員が必ず受講しますし、重点テーマについてはリマインド通知も行っており9割以上の高い受講率となっていますね。日頃から健康を意識している人も多く、eラーニングを知識の向上のために活用してくれているのだと思います。

実際、アンケートを見ると健康リテラシーが全体的に向上しているので、効果としても現れています。

鎌田:私もeラーニングの受講率の高さには転職してきてすぐに驚かされました。先ほどの認知・身体機能測定のイベントと同様に、eラーニングにおいても「受講してよかった、ためになったな」と感じてもらえるよう、これからもどんどん工夫していくつもりです。

また、同僚を誘って能動的に参加したくなるような、楽しく取り組める健康づくりの機会も色々と設けていきながら、そのタイミングに合わせて教育を行うような仕組みも作っていきたいと思っています。楽しいからこそ周囲に輪が拡がり、健康づくりが進んでいくのだと思います。

自分たちにはない視点を与えてくれた

健康経営に向けて新たな取り組みを始めている中で、WILLEEのサポートにより、大きく変わったところはありますか。

田村:何もかも改善してますよ。特に、他社の施策に関する情報が少ない中で、多く会社を見られている田澤さんから「他社ではこうした取り組みをしていますよ」というアドバイスをもらえるのは大変参考になります。

また、健康経営度調査においても、以前は自己流で進めていたため、課題をどのように認識して、どのように対応し、次はどんな課題に向き合うべきか、そのロジックを組み上げることができていなかったんです。そのため、私たちは「良くなった結果」だけに注目して社外への情報開示や調査票回答に臨んでいました。

しかし、田澤さんからは良くなった結果だけでなく、「次はここが課題だから、課題もしっかり開示していきましょう」と勧められたんです。これは私たちにはない視点でハッとしました。

田澤:健康経営度調査でも「評価」だけでなく「改善」が求められていますので、成果やプロセスを一つ一つ振返り、課題を整理して次に活かしていくスタンスが、回りまわって高い評価に繋がると思います。

また、「評価」をするためには、何に取り組んでどのような指標改善を図るか、といった戦略が不可欠ですし、戦略があるからこそ、健康経営に関わる担当者全員が同じ方向を向いて動き出すことができるのではないかなと思っています。

御社では戦略という太い幹がしっかり出来上がり、CAPDサイクルの型も構築されてきていますので、今後もサステナブルに健康経営が進むと確信しています。

鎌田:私は、前職でも健康経営に携わってきた経験があり、自分では「わかっている」つもりだったんです。なので、過去に成功したイベントのエッセンスをこの会社で取り入れたらうまくいくのではないかと思っていました。

しかし、田澤さんと一緒にお仕事をする中で、健康経営においては、いかに経営戦略と結びつけて考えるかが重要であり、私自身それができていないことに気づかされました。

もし、田澤さんからのサポートがなければ、前職までの通り従業員の要望だけに注目して、「このイベントをすれば喜んでもらえるんじゃないか」といった具合で企画を進めていたかもしれません。

従業員の声を反映させつつ、会社の戦略とうまく調和させながら企画を立てるという視点が得られたのは、田澤さんのおかげですね。

宮野:私は、前職で健康関連の業務に携わっていましたが、健康経営の実践において何が必要で、何を従業員に提供すべきか、その経験やスキルを持ち合わせていませんでした。田澤さんには基礎から教えてもらい大変感謝しています。それは経済産業省のホームページだけを見ていても理解はできなかったものですから。

正直、田澤さんの豊富な知識に追いつくので精一杯なんですが(笑)、初心者である私に対してもとてもわかりやすく丁寧に教えてくださるので、自分でもどんどん理解ができるようになり、今とても仕事が楽しく感じています。

健康づくりの主人公は従業員本人であって欲しい

健康経営における皆さんの活動の様子がよく伝わってきました。最後に、今後の健康経営に向けて抱負や意気込みを教えてください。

田村:私たちは、最終指標、つまり戦略マップで描いた“目指す姿”につながることが重要だと捉えています。

私たちは何のために施策を実施するのか、そしてなぜ従業員たちに参加を呼びかけるのか、それを明確に伝えることができれば、従業員一人ひとりの参加意欲を引き出し、結果として健康に対する意識や主体性も向上していくはずです。

健康づくりの主人公は従業員本人であって欲しい。そういう想いで今後も引き続き、健康経営を前進させていきたいと思います。

辻川:主体性をどう持たせるかという意味では、特に若年層へのアプローチを重視していきたいと考えています。私もそうでしたが、若い頃はどうしても健康を後回しにしがちです。そういった方たちに健康の重要性をどのように訴求をしていくかについては、今後の特に注力して取り組む必要があると感じています。

宮野:私は現在、休職者関連の業務を担当しています。従業員が休職に至る前に健康状態を維持・改善できるような取り組みを会社としてより強化していきたいと考えていますし、休職に至ったとしても、復職後に健康状態を維持・向上できるサポートができれば、組織全体としての健康レベルは高まると思っています。

鎌田:SCREENホールディングスが2023年度に健康経営銘柄に選定されたことは、非常に喜ばしい成果です。しかしそれで満足するのではなく、一つ一つの取り組みレベルを上げていきながら、SCREENが健康経営を象徴する会社として「健康の土台がしっかりしている会社」「ユニークな健康増進の施策を実施している会社」と広く認知されるよう、引き続き努力していきたいです。

田村:そうですね。いきいき9に紐づく施策の強化や、データドリブンの取り組みはまだ始まったばかりですので、これからがとても大事だと思っています。

フィジカル面の施策もそうですし、メンタルヘルスやそれを下支えする職場環境やマネジメントも、健康経営においては非常に重要なテーマです。田澤さんには、こうしたところの知見もぜひお借りしたい。今後とも田澤さん、そしてWILLEEには期待しています。

           
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