1. 健康経営の社内浸透に関する実態
健康経営に対する従業員の理解が十分進んでいない
近年、健康経営に取り組む企業は着実に増加しています。経済産業省が実施している「健康経営度調査」の回答法人数は年々増加しており、健康経営への関心の高まりを示しています。
しかし、企業の取り組みが活発化する一方で、従業員側の理解が十分に進んでいないという課題が浮き彫りになっています。
帝国データバンクが実施した調査によると、健康経営に取り組んでいる会社に勤める人のうち、
– 健康経営を良い取り組みだと回答していない割合:34.0%
– 健康経営によるメリットを実感していない割合:40.7%
という結果が出ています。つまり、3人に1人は健康経営の意義を理解しておらず、5人に2人はメリットを感じていないというのが現状なのです。
健康施策への従業員の参加に壁がある
さらに、健康施策への従業員参加が期待するほど伸びていないという課題も見られます。令和5年度の健康経営度調査でホワイト500に認定された法人においても、
– 食事の主要施策における従業員参加率:平均46.2%
– 運動の主要施策における従業員参加率:平均49.1%
と、いずれも50%を下回っています。つまり、健康経営の先進企業であっても、半数以上の従業員が主要な健康施策に参加していないというのが実態です。
また、令和6年度の健康経営度調査からは、施策の実施該当数を評価から外し、主要施策をいかに浸透させているかに評価が限定されるようになりました。これは、単に施策の数を増やすのではなく、従業員の参加を促進することがより重要視されるようになったことを示しています。
つまり、健康経営を推進しようと考えている企業は、今後より一層、従業員参加の方策について考えていかないとならないと言えるでしょう。
2. 健康経営の社内浸透に必要な従業員コミュニケーション
では、このような課題を克服し、健康経営を効果的に社内浸透させるためには、どのようなコミュニケーションが必要なのでしょうか。
重要なポイントは以下の3つです。
①健康経営の意義や全体像を伝える
②健康施策を分かりやすく魅力的に伝える
③健康づくりの実績・事例をもとに輪を拡げる
まず重要なのは、健康経営の意義や全体像を従業員に分かりやすく伝えることです。これにより、取り組みに対する賛同を促すことができます。
次に、個々の健康施策について、その内容や参加方法を分かりやすく、かつ魅力的に伝えることが重要です。これにより、具体的な取り組みへの参加を促すことができます。
最後に、社内で実際に行われた健康づくりの実績や好事例を共有し、その輪を拡げていくことが大切です。これにより、健康経営を会社のカルチャーとして定着させることができます。
3. 健康経営の社内浸透を成功させるための具体的アプローチ
それでは、上記3つのポイントについて、それぞれの具体的なアプローチ方法を見ていきましょう。
健康経営の意義や全体像を伝える
健康経営の意義を伝える際、経済産業省の定義「健康経営とは、従業員等の健康保持・増進の取り組みが将来的に収益性等を高める投資であるとの考えの下、健康管理を経営的視点から考え、戦略的に実践すること」をそのまま伝えても、従業員にはピンとこないでしょう。むしろ「会社のための取り組みじゃないか」と誤解を招く可能性すらあります。
重要なのは、健康経営に取り組むことで、そして健康施策に参加することで、従業員自身や職場にどのような良いことがあるのか(=ありたい姿)を具体的に伝えることです。
例えば、
従業員にとってのメリット
– 強いストレスを感じにくくなる
– 疲れにくい身体になる
– 病気にならず元気に働き続けられる
– 自分や家族の健康に対する意識が高まる
職場全体にとってのメリット
– 同僚とのコミュニケーションが増える
– 職場の雰囲気が良くなる
– 楽しく働ける
– お互いに刺激を与え合って成長できる
このような具体的なメリットを示すことで、「そうなりたいな」「それっていいね」と従業員に思ってもらうことが大切です。
また、そのような状態の実現を目指して、会社としてどのようなことに取り組むのか、全体像を分かりやすく示すことも重要です。実は、健康診断やストレスチェックですら、健康経営の取り組みだと理解していない従業員も少なくありません。施策を単発で受け取っているだけだと、「なぜこんなことをしなければいけないんだ」という疑問を抱きかねません。
全体像があって、その中の一つとして各施策に取り組んでいるんだということを分かりやすく伝えることで、取り組みの位置づけや繋がりが理解されやすくなります。
従業員の健康行動を促進する全体像の伝え方については、こちらの記事をご参照ください。
健康施策を分かりやすく魅力的に伝える
健康施策への参加を促すためには、施策の内容を分かりやすく、かつ魅力的に伝えることが重要です。ここでは、伝え方を工夫するポイントとして、「動機づけ」「障壁の除去」「きっかけづくり」の3つの観点から考えてみましょう。
動機づけ(不要の壁を超える)
多くの従業員は、健康施策に対して「自分には必要ない」と感じがちです。この「不要の壁」を超えるためには、以下のような動機づけが効果的です。
– 自分のためになる:「この施策に参加すると、こんな良いことがありますよ」
– 家族のためになる:「あなたの健康は、大切な家族の幸せにもつながります」
– 職場の話題になって楽しそう:「みんなで参加すると、こんな楽しいことがありますよ」
– ネタとして体験してみたい:「話題の○○を、無料で体験できます!」
障壁を取り除く(不適の壁を超える)
次に、「自分には向いていない」「難しそう」といった「不適の壁」を取り除くことが大切です。
– 簡単に始められる:「まずは○○からでOK!誰でも簡単に始められます」
– 途中で中断・離脱しても大丈夫:「無理なく自分のペースで参加できます」
– 初心者向けコースがある:「初めての方向けの丁寧なサポートがあります」
きっかけを作る(不急の壁を超える)
最後に、「今すぐでなくても」という「不急の壁」を超えるためのきっかけづくりが重要です。
– 景品がもらえる:「参加者全員に素敵な景品をプレゼント!」
– ポイントがもらえる:「参加するとポイントが貯まり、○○と交換できます」
– 復興支援に貢献できる:「あなたの参加が、被災地の復興支援につながります」
– 期間限定:「今月中の参加で特典があります!お早めに!」
これらの観点を踏まえ、施策ごとに伝える内容を研ぎ澄ませていくことが大切です。
また、良い施策も魅力的に映らなければ参加を促せず勿体ないため、デザイン面での工夫も重要です。
デザイン面の工夫
例えば、ポスターを作成する場合は、以下の観点に注目しましょう。
– テイスト・カラー:明るく前向きな印象を与える色使い
– フォント:読みやすさとインパクトのバランス
– イラスト・画像:親しみやすく、内容を視覚的に表現するもの
– 配置・サイズ:重要な情報が目立つレイアウト
– キャッチコピー:興味を引き、行動を促す魅力的な文言
健康づくりの実績・事例をもとに輪を拡げる
健康経営を会社のカルチャーとして定着させるためには、次から次へと新しい施策を打ち出すだけでは不十分です。社内で取り組んだ実績や好事例を積極的に共有し、「それっていいね!」と思う機会を増やしていくことで、より多くの従業員に「自分もやってみよう」と思ってもらうことが重要です。
具体的には、以下のような情報を共有していくと効果的です:
– ○○部署ではこんな楽しいイベントを行い、とても盛り上がりました
– ○○の施策には、こんなに大勢の方が参加しました。こういう人たちも参加していました
– ○○の取り組みの結果、以前と比べて/参加前後でこんな良い変化がありました
– こういうきっかけがあって○○さんが健康づくりを始めました。その体験談をご紹介します
– ○○部署では、こんな素敵な職場活性化の取り組みを行っています
このような情報を定期的に発信することで、健康経営の取り組みが「他人事」ではなく「自分事」として認識されるようになり、自然と社内に浸透していくでしょう。
4. WILLEEの支援
ここまで、健康経営の社内浸透を成功させるためのポイントについて解説してきました。しかし、これらを実践していくのは容易ではありません。特に、大規模な組織や複数の事業所を持つ企業では、全社的な浸透を図ることは大きな挑戦となります。
そこで、WILLEEでは健康経営の社内浸透を成功に導くために、「社内浸透サポート」 を提供しています。以下、その支援内容について簡単にご紹介します。
Step1:現状課題の整理
まず、なぜ健康経営が浸透していないのか、その課題を明確にします。具体的には以下の3つの観点から現状分析を行います。
– 伝える相手に関する現状分析
– 伝える内容に関する現状分析
– 伝える方法に関する現状分析
これにより、どこに課題があるのかを特定し、効果的な対策検討に繋げていきます。
Step2:強化方策の検討
現状課題を踏まえ、どのように浸透を強化していくかを整理します。具体的には以下の2点について検討を行います。
– 目的・施策全体像の再整理
– コミュニケーションプランの全体設計
この段階で、健康経営の目的を改めて明確にし、それを達成するための施策の全体像を整理します。また、それらを効果的に従業員に伝えるためのコミュニケーションプランを策定します。
Step3:強化方策の実行
具体的な強化方策を実行支援します。先述した3つのポイントに沿って、以下のような方策を展開します。
– 健康経営の意義や全体像を伝える方策
– 健康施策を分かりやすく魅力的に伝える方策
– 健康づくりの実績・事例をもとに輪を拡げる方策
各企業の状況や課題に応じて、最適な方策を提案し、その実行をサポートします。
Step4:浸透結果の検証
社内浸透が進んだかを検証し、必要に応じて改善を図ります。具体的には、以下に関わる指標を設定して検証を行います。
– 健康経営に関する理解
– 健康づくりに対する関心
– 健康施策への参加
社内浸透の強化を図った結果、従業員の理解・関心・行動の3側面においてどのような変化が生まれたか定期的に測定し、その結果を踏まえて継続的な改善を行います。
5. まとめ
健康経営の取り組みを成功に導くためには、従業員の理解と参加が不可欠です。そのためには、単に施策を実施するだけでなく、その意義や内容を効果的に伝え、従業員の共感を得ることが重要です。健康経営の社内浸透は「伝え方」がカギとなります。
本コラムでご紹介した3つのポイントは以下の3つです。
- 健康経営の意義や全体像を伝える
- 健康施策を分かりやすく魅力的に伝える
- 健康づくりの実績・事例をもとに輪を拡げる
これらを意識しながら、自社の状況に合わせたコミュニケーション戦略を構築し、実践していくことで、健康経営の社内浸透を着実に進めることができるでしょう。
しかし、これらを自社だけで実践していくのは決して容易ではありません。特に、大規模な組織や複数の事業所を持つ企業では、全社的な浸透を図ることは大きな挑戦となります。
そこで、WILLEEでは健康経営の社内浸透を支援するサービス「社内浸透サポート」を提供しています。現状分析から戦略立案、実行支援、効果検証まで、一貫してサポートいたします。
健康経営の社内浸透にお悩みの企業様、より効果的な取り組みを目指したい企業様は、ぜひWILLEEにご相談ください。皆様の健康経営の成功をサポートいたします。