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2024/05/20

健康経営戦略マップの作成によくある失敗例と解決策7選

健康経営を通じてどのような姿の実現を目指すか、そのためにどのような健康施策を推進し、どのような指標改善を図っていくかを一連の繋がりで示す戦略マップ。

戦略マップにおいて唯一無二の正解はないものの、明らかに不適切な箇所があると、健康経営のPDCA推進にひずみが生じ、成果導出に向けたスピードが遅くなる可能性があります。

そのため本稿では、健康経営に取組む各社の戦略マップにおいてよく散見される失敗例をご紹介し、解決策についても解説します。これから戦略マップを作成する方、戦略マップの見直しを図ろうと考えている方においてお役立ちいただければと思います。

1.健康経営戦略マップが適切でないと起こりうること

健康経営を推進するためには、健康経営の「目的」→「戦略」→「施策」→「体制」→「基盤」を検討し、施策・体制・基盤の推進に向けた具体的な「計画」を整理することが欠かせません。
(参考記事:健康経営の「戦略」とは何か?健康経営戦略として検討・整理すべきことを全体解説

また、健康経営戦略マップは、この一連の検討プロセスにおける、「目的」→「戦略」→「施策」のポイントとなる部分を1枚絵で図示化するものになり、健康経営を進める上で最も重要なものとなります。
(参考記事:健康経営戦略マップの作り方 コンサル現場で用いる8ステップ徹底解説

戦略マップが適切に作成されていると、以下の図に示す3つのことが実現されますが、適切に作成されていないとその逆のことが起こりがちです。

推進に関わるステークホルダーの熱量が上がらない

戦略マップが適切に作成されていない状態で健康経営を進めようとすると、経営層、事業所推進担当者、産業保健スタッフの3つのステークホルダーとの間で以下に示すようなことが起こりがちです。

まず経営層についてです。
曖昧な戦略マップでは、経営層と進めるべき方向性に共通認識が生まれず、健康経営の認定を取ることばかりに関心の目が向けられてしまいます。
そのため、取組み1つ1つの重要性をなかなか理解してもらえず、予算の承認が下りない、経営会議のアジェンダから外される、社内への健康経営の方針伝達に協力が得られない、といったことが生じることもあります。

続いて事業所の健康経営推進担当者についてです。
各事業所の総務部門担当者などが、多様な業務に関わる中の一つとして、健康経営の推進において役割を担っているケースが多いと思います。
そのため、曖昧な戦略マップを基に対話をすると、健康経営の意義を正しく理解してもらえず、健康経営に関する優先度を上げてもらうことが難しい、といったケースがよくあります。
健康イベント1つとっても、事業所内でメールや所報等で情報共有はするものの、率先垂範して参加呼びかけまではしてもらえない、施策参加実績を把握するまでは協力してもらえない、といったことが生じることもあります。

最後に産業保健スタッフについてです。
専門職として、健康診断の事後措置、高ストレス者のフォロー、長時間労働者の面談、日々の健康相談など、目の前の一人ひとりの従業員に対するサポートに日々従事しています。
そのため、曖昧な戦略マップを基に対話をすると、健康経営に取り組む目的が理解されず、大切な時間を減らしてまで健康経営の中に含まれる多様なポピュレーションアプローチに時間を割くことはできない、どうせ会社が認定を取るためにやっていることでしょ、という反対意見が挙がることもあります。

施策1つ1つの目的意識が欠如する

適切な戦略マップができていれば、健康施策一つひとつについて関係線を辿っていくことによって、何のために実施するのか「目的」を再確認することができます。

施策への参加量を増やすことは1つの「目標」ですが、その先に繋がる効果が、施策を実施する「目的」なはずです。
その「目的」を、施策推進に関わる関係者で共通認識することで、数々の工夫が生まれ、成果に繋がる施策へとブラッシュアップされていくはずです。

しかしながら、適切な戦略マップができていないと、健康経営全体の中でどのような位置づけの施策なのか、何を目的とした施策なのか、が不明瞭となり、目的意識が欠如したまま「実施すること」が目的となってしまいます。

適切な効果検証ができない

適切な戦略マップができていれば、検証するポイントが明確になります。

主要な健康施策については関係線を左から右に辿っていくことによって、施策実施効果として何を検証すれば良いか、が明確になります。
また逆に関係線を右から左に辿っていくことによって、最終目的指標の改善・悪化に関して、どの施策が良かったのか・改善すべきなのかを振返ることができます。

しかしながら、適切な戦略マップができていないと、このような検証・改善ができません。
それゆえ、何年やっても健康経営がやりっ放しで終わってしまい、何のために行っているのか分からないというドツボにはまっていってしまいます。

2.健康経営戦略マップの基本構造

戦略マップの作成における失敗例に入る前に、戦略マップの基本構造についておさらいをしておきます。

戦略マップは、健康投資、健康投資効果、健康経営で解決したい経営課題から構成され、健康投資効果の中がさらに3つの指標カテゴリーに分かれています。
特にこの3つの指標カテゴリーの意味合いを正しく理解できていないと、曖昧な戦略マップになりますので、改めて確認しておきましょう。

(戦略マップの雛形は、健康経営投資会計ガイドラインをご参照ください。)

[①健康投資]
推進する主要な健康施策を記載します。

[②健康投資施策の取組状況に関する指標]
主要な健康施策への従業員参加状況を表わす指標を記載します。

[③従業員等の意識変容・行動変容に関する指標]
日常的な職場のサポート環境や従業員の健康意識・行動の状態を表わす指標を記載します。
1つ左の従業員の施策参加をきっかけとして変化する、職場環境や、ストレス対処行動、健康配慮意識、生活習慣、治療などに関する指標などが該当します。

[④健康関連の最終的な目標指標]
従業員の心身の健康状態を表わす指標と、従業員のパフォーマンス発揮状態を表わす指標の2層に分けて記載することが分かりやすいかと思います。
前者は、1つ左の意識変容・行動変容に関する指標が向上/悪化することで変化する、心と身体の健康状態であり、健診やストレスチェックの結果、心身の症状などが該当します。
後者は、それら心と身体の健康状態が向上/悪化することで変化する、パフォーマンス発揮状態を表わす指標を記載します。ワークエンゲージメント、プレゼンティーズム、アブセンティーズムなどに関連する指標が該当します。

[⑤健康経営で解決したい経営課題]
パフォーマンス発揮状態を表わす指標が向上することによって、従業員および会社がどのような姿になることを目指しているのかを記載します。

3.健康経営戦略マップの作成でよくある失敗例

ここからは、戦略マップ作成でよくある失敗例と解決策について7点解説します。

1. 情報量が多すぎる

設定している指標が多すぎる、また指標と指標の関係線が多すぎることで、見る意欲が失せるような戦略マップとなっているケースです。

(例)
生活習慣改善に関する各施策から、「運動習慣者比率」、「睡眠良好者率」、「飲酒習慣者比率」、「喫煙率」などの生活習慣に関する各指標すべてに対して関係線が引かれ、そこからまた健診有所見率や高ストレス者率などへすべて関係線が引かれている

(発生する問題)
分かりにくい戦略マップでは、健康経営のPDCAが進みにくいでしょう。
施策一つひとつが何に繋がるのか目的意識が曖昧になりますし、何を検証して良いのかが定まらず、やりっ放しの健康経営に陥る可能性が高くなります。

(解決策)
以下のような対策を取ると良いでしょう。
・ 記載する指標を主要なものに限定する
・ 類似する指標をひとまとめにした総合指標を作成する
・ 施策や指標の配置を調整することで、関係線が重ならないよう工夫する
・ 相関の強い繋がりのみに絞って関係線を引く

2. 指標と指標の関係が多対多になりすぎている

情報量が多くなりすぎないように配慮してか、多数の指標群と多数の指標群との間に一本の関係線を引いているだけとなっているケースです。

(例)
[従業員等の意識変容・行動変容に関する指標]に多数の指標が設定され、[最終的な目標指標]にも多数の指標が設定されているが、それらの間に1つの大きな三角矢印が置かれているだけとなっている

(発生する問題)
どの指標がどの指標に強く影響を及ぼす、という仮説がないため、検証も十分にしきれないリスクがあります。

(解決策)
以下のような対策を取ると良いでしょう。
・ 1つの大きな三角矢印スタイルをやめて、指標間に関係線を引くスタイルにする
・ 相関性の強い指標同士が何かを特定し、その間のみに関係線を引く

3.相関性がない指標同士の間に関係線が引かれている

おそらく相関関係を確認せず、指標と指標の間に何となく関係線が引かれているケースです。

(例)
「有所見率」と「プレゼンティーズム」の間に関係性が引かれている
「特定保健指導対象者率」と「ワークエンゲージメント」の間に関係線が引かれている

(発生する問題)
相関関係のない・薄い指標間の関係線を頼りに健康経営を進めていても、成果に繋がらない可能性が高いです。
この例で言えば、有所見率を下げようと努力をしてもプレゼンティーズムに変化は生まれず、健康経営の目指す姿にたどり着くことが不可能になります。

(解決策)
・ 先行研究を探して、指標間の相関関係の有無を確認する
・ 自社の実データを分析して、指標間の相関関係を確認する

4.指標と指標の繋がりに論理飛躍がある

中間に配置すべき指標が抜けていることによって、指標と指標の間の関係性に唐突感を覚えるようなケースです。

(例)
「精密検査受診率」と「アブセンティーズム」の間に直接関係線が引かれている
「健康教育参加率」と「有所見率」の間に直接関係線が引かれている

(発生する問題)
唐突感がある場合の多くは、成果に繋がらない可能性が高いです。
この例で言えば、本来のロジックとしては、精密検査受診率が上がる→適切な治療継続が促進される→重症化リスク者が減る→アブセンティーズムによる損失が下がる、になります。
精密検査受診率が上がっても、その後の適切な治療継続が促進され、重症化リスク者が減らなければ、アブセンティーズムによる損失抑制には繋がりません。
そのため、モニタリングすべき中間指標が抜けていると、成果導出に向けた検証・改善がしきれないのです。

(解決策)
・ 戦略マップの基本構造を振返り、抜け落ちている指標カテゴリーがないかを再確認する

5.指標カテゴリーの定義とずれた位置に指標が配置されている

戦略マップの基本構造から逸脱した位置に、指標が配置されているケースです。

(例)
「有所見率」が、[従業員等の意識変容・行動変容に関する指標]の指標カテゴリーで「運動習慣者比率」と縦に並列配置されており、それらの間に関係線が引かれていない

(発生する問題)
戦略マップの構造と逸脱して指標を配置してしまうと、他の指標との因果関係が失われたり、因果関係が逆転してしまったりすることに繋がり、正しい戦略にならない可能性が高いです。
この例で言えば、「有所見率」は[最終的な目標指標]のカテゴリーに配置され、「運動習慣者比率」と紐づけられているべきですが、縦に並列になっていることで指標間の因果関係が失われています。

(解決策)
・ 戦略マップの基本構造に立ち返り、各指標の配置が適切かを再確認する

6.指標改善に繋がる道筋が適切に立てられていない

この指標だけが改善すれば、本当にこの指標も改善するのか疑問に思うようなケースです。

(例)
「ワークエンゲージメント」向上に繋がる指標が、「労働時間」「有給取得率」だけ
「高ストレス者率」低減に繋がる指標が、「ストレスチェック受検率」だけ

(発生する問題)
指標改善に繋がる道筋が不明瞭であると、当然ながら戦略とは言えず、指標改善が図れません。
この例で言えば、「ワークエンゲージメント」を向上させるには、職場改善等を通じて仕事の資源を高めるアプローチが不可欠ですし、「高ストレス者率」を低減するにはセルフケアを通じてストレスとの付き合い方などを高めることなども有効ですが、それらの記載が全くないため、適切な施策が行われず、当然指標が改善されることもないでしょう。

(解決策)
・ 指標を改善するにはどうしたら良いか、ロジックツリーを用いて言語化し、それを適切に表す指標を設定する

7.不適切な指標が設定されている

重複した指標が設定されていたり、測定できなさそうな指標が設定されていたりするケースです。

(例)
「労働生産性」と「プレゼンティーズム」が別々に設定されている
「疾病の早期発見」など何を母数にどう測定するのか不明瞭な指標が設定されている

(発生する問題)
重複指標があることによって、ややこしい戦略マップになるだけで、本来の重要な指標間の関係性が認識されにくくなります。
また測定できない指標が設定されていると、その前後で繋がりを持たせた指標が十分に検証できないことになります。
この例で言うと、「二次健診受診率」を向上することによって、疾病の早期発見・早期治療に繋げるという意味であれば、「重症化高リスク群における治療率」が向上し、それが「アブセンティーズム」にも影響を及ぼすはずなので、健診・問診結果から把握可能な指標に変更するのも1つの手でしょう。

(解決策)
・ 重複する指標はどちらかに絞る・まとめる
・ 測定が難しい指標は廃止して、測定可能な別の指標に置き換える

以上、戦略マップ作成においてよくある7つの失敗例でした。

健康経営銘柄2024に選定された53社においても、これら失敗例を含んでいるケースも散見されたため、ホワイト500や健康経営優良法人に認定されている企業においても当てはまるものが多くあるのではないかと思われます。
是非ご参考にされてください。

4.WILLEEの支援

弊社では、戦略マップを作成したい、見直したいというご要望に対して、以下のようなアプローチでサポートをしています。

Step1 健康経営の目的(=目指す姿)を決める
Step2 戦略(=進む方向性)をロジックツリー化する
Step3 ロジックツリーをすべて指標化する
Step4. 指標間の相関性を分析し、指標を調整する
Step5 今までの健康施策を紐づける
Step6 指標の過去からの推移を検証する
Step7 健康施策の強化・廃止・追加を検討する
Step8 戦略マップを修正し、完成させる

また、戦略マップを踏まえた推進計画への落とし込みとその実践、戦略マップがどのように進捗したかの検証まで伴走型でサポートしています。
これから戦略マップの作成・見直しにおいて、自社単独で進めることに課題を感じる場合には、是非ご相談ください。

株式会社ウィリーでは、何か特定のサービスに誘導するということは一切なく、完全中立的な立場で、成果導出に向けた健康経営の戦略づくりから実行・効果検証までの一連をお手伝いさせていただいております。
これから健康経営に取組む場合、健康経営の見直しを図りたいと考えている場合、いずれであっても、顧客に寄り添いながら伴走型でサポートを提供しております。

弊社では、健康経営戦略マップ作成に関する気軽な壁打ち相手になることが可能ですので、ご希望の方は、「お問い合わせ」にて「健康経営戦略マップ作成に関する壁打ち希望」の旨をご記載のうえご連絡いただければ幸いです。